このアルバムはオムニバス的な形式を採用しており、歌っているのはダーレン・ラヴ、ロネッツ、クリスタルズ、ボビー・ソックス&ザ・ブルージーンズの4組。当時のスペクターのヒット曲の大部分を歌っていたシンガー達です。
ですが、このアルバムの一番の聴きどころは、参加してるアーティストのメンツよりも、<Santa Claus Is Coming To Town>や<Winter Wonderland>といった定番のクリスマスソングが、「ウォール・オブ・サウンド」でアレンジされているという、音そのものなんです。「ウォール・オブ・サウンド」とはプロデューサーであるフィルスペクターの独特の音作りのことで、全ての楽器が溶け合って一体となり音の壁のように迫って来ることから「ウォール・オブ・サウンド」と呼ばれています。
アレンジを務めるのはジャック・ニッチェ、演奏はハル・ブレイン、レオン・ラッセル、トミー・テデスコといったいつもの面々で、彼らがフィルスペクターの「ウォール・オブ・サウンド」に欠かせないメンバーだったことが分かります。
「ウォール・オブ・サウンド」の代表曲は、ロネッツの「Be My Baby」です。では続いてそのロネッツが歌う「I Saw Mommy Kissing Santa Claus」
ウォール・オブ・サウンドとは、「当時としては珍しい多重録音と巧みなエコー処理により、まるで音の壁のようなぶ厚く、迫力のあるサウンドのこと」という意味合いの解説が多く見られます。しかし、多重録音は1950年代には確立されていて、60年代に入って「多重録音」はすでに珍しいものではなくなっていたはずです。
多重録音も一つの要素だったかもしれませんが、それ以上に音の重ね方に特徴があるようです。
通常レコーディングにおいて、ピアノ、ベース、ギターなどの楽器は1台ずつしか用意しません。しかし、スペクターは、それぞれ複数用意し、ユニゾンで弾かせることにより十分な音量と音圧を得ようとしたそうです。さらに、基本的なバック・トラック、つまり、リズム・セクションとホーン・セクションはワン・トラックによるライヴ(一発録音)だったそうです。
それぞれの楽器がピッタリと重なり合うまで何度も繰り返して演奏させて、個々の楽器の音の輪郭がとれ、溶け込んで一体となることを目指いしていたようです。
また、フィル・スペクターは、音をひとつのかたまりとして表現するには、ステレオよりもモノラルが良いと考え、モノラル・サウンドにこだわり続けたことでも有名です。でも、後にステレオ録音のウォール・オブ・サウンドも作り上げます。
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